怖かった初トイレ

多分、2歳前後の事なんだろうと思う。

母親に聞いてみたが、その事は覚えていないとの事だった。

この事件前後の記憶がはっきりあるわけじゃないので

その頃トイレトレーニングをしていたのかどうかも今じゃ解らない。

ので、覚えている限りを書こうと思う。

 

夜中、尿意を感じて目が覚めた。

とりあえず「トイレに行こう」と布団を抜け出した。

部屋や廊下はものすごく暗い小玉電球がついていた。

昼間と全然違うその光景は、正直ものすごく怖く感じた。

学校祭準備で夜まで残った校舎内の感じに似ている。

出来ることならこんなとこ歩きたくない、でもトイレにはいきたい。

と言うか、トイレにいかないと確実にヤバい事になる。

ガマン出来そうな感じでもなかったし、何より怖かったので廊下を走った。

トイレのドアを開けると、これまたものすごく暗い電球がともっていた。

明るさ的には20ワットぐらいのような気がする。

無理矢理オシャレなイメージをするなら、

照明を落として女子力高そうなキャンドルを灯した部屋のような感じ。

ただこれは明るさの話で、雰囲気はそんなオシャレなもんじゃない。

当時の住まいは木造平屋で、トイレも花子さんが棲んでいてもおかしくない佇まい、

汲み取り式である上に、トイレの穴もでっかいタイプのやつだ。

床から一段高くなったところに便器がある。

脳内が尿意最優先の警告を出すなか、下着を下して便器をまたぎ、とりあえず用を足した。

立ち上がってさあ降りようと思ったその時、うっかり穴の方を見てしまった。

ただでさえ薄暗いトイレのでっかい穴、

「落ちたらどうしよう、ってか絶対落ちる!」と思ったところで動けなくなった。

ホラーレベルで暗いトイレのなか、おしり丸出しで動けない。

助けを呼ばなきゃと思いながら

母親は一度寝入ったら、全力でケリを入れても起きないタイプなのは知ってる。

なので最初から母親を呼ぶ選択肢はない。

トイレと寝室は距離があったので、できる限りの大声で「パパー!!」と何度か叫んだら

父親が来てくれて、自分を抱えて降ろしてくれた。

とにかくものすごく怖かった。

そのせいかもしれないが、いまだに汲み取り式のトイレは怖い。

どうしても穴に片足を落としてしまうような気がする。

今の時代、汲み取り式トイレにお目にかかる機会もかなり減ったので

文明ってのはありがたいものだと勝手に思っている。