やってみたかったバブルバス
今考えると、ものすごいあばら家に住んでいたんだとは思う。
でも、この家にはお風呂がついていた。
小さいころの感覚だからだろう、わりと広いお風呂だったと記憶している。
その日の昼間、自分はテレビでいわゆるオシャレでおハイソな外国番組を見ていた。
貧乏家庭だったので、小さい白黒テレビだった。
画面の中ではお金持ちそうな外国人がアイスクリームを作っていたりして、
「アイスってのは自分で作れるもんなのか」なんて思いながら番組を見ていた。
そして場面は変わって、オシャレ外国人が何やらあわあわのすっごいお風呂に入っていた。
「なんだこれ!?」
「アメリカ人ってのは、あわあわのお風呂に入るんだ!」
(古い時代の人間なので、外国人はアメリカ人だと思い込む)
「いいなー、これやりたい!」 当然そうなる。だってすっごいあわあわだし。
夕方、母親がご飯のしたくをしながらお風呂をわかしていた。
なんとなくお風呂場をのぞいた自分の視界にとある物が入った。
今はお目にかからない、赤いボトルのシャンプーだ。
ちなみにこの時代、今のような大きいボトルはない。
「これをお風呂に入れたら、あのあわあわのお風呂になる!」
そう思った自分は、シャンプーの中身を全部湯船につっこんだ。
「よし、あとはバシャバシャして泡立てればアレになる!」
そう思ったところで母親に見つかった。
「お風呂のお湯かえたばかりだったのに!!」と、えらい勢いで怒られた。
貧乏だったからなのか昔はそうだったのか、湯船の水は毎日変えなかったらしい。
何故かその後どうしたのかは覚えていないが、
仕事から帰宅した父親がとりなしてくれただけ、うすぼんやりと覚えている。